一日一ぽち


2006-05-21 (Sun)

『軍師 竹中半兵衛』笹沢 左保

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軍師竹中半兵衛
笹沢 左保
角川書店 1988-09
売り上げランキング : 83,252
評価

by G-Tools , 2006/05/22


竹中半兵衛重治。恐るべき男よ、と秀吉は言った。まるで当人みたいに信長というものをよく知っている。そこまで他人の心が読めて、中身を見通せるものか。もし半兵衛を敵に回したら、これ以上恐ろしい人間はいなかった。この男なら、天下を取ってもおかしくない。だが、それにしては、あまりに欲がなさすぎる。立身出世を望まず、権勢といったものに関心を示さない。それでいて半兵衛は秀吉に知恵を貸すことを惜しまない。荒馬を乗りこなすのが楽しいだけで、馬を飼うのは性に合わぬと、半兵衛は言う。天下を治めるのは馬を飼うことに似ている。信長、秀吉という荒馬を自在に乗りこなし、戦国を駆け抜けた一世の軍師,三十六年の生涯を描く大河小説。

僕が採った中では最も長編なる重治像。著者名に惑わされてか 文芸色も最も色濃く映った。本文より先に一読した解説に「半兵衛のお市への想い」について触れられてあった為 「ここまでもが『お市さま……』か」と面白くない気分に先ず駆られたのだが 繙けばそれは 永遠の理想像として互いの心を暖め眼に見えないかたちで支え続ける類の「想い」であって 存在により作品のメインテーマが逸れることは一度も無かった。
作中では 羽柴秀吉と蜂須賀正勝の手柄として伝わることの多い墨俣築城の成功や 織田信長の考案とされている長篠合戦での鉄砲三段攻撃まで 実は半兵衛が発案に因るものとされるなど 大軍師殿を持ち上げること限りない。一方で 当初「師」と仰いで半兵衛を迎えた秀吉の 己が功名と共に高じてゆく人間不信の様も その矛先となった半兵衛の心情を軸として丁寧に描かれている。
読み進めるうちに 果たして秀吉というのは  “人たらし” に於いては天下一品 誰をも魅了せずにおかない不思議な芸当を身につけて居たが  さて “人遣い” となると 巧妙だったとは一概に言えないな……と感じる。いつだったか僕は 「(人材を)遣うのは君主であって家臣ではない」と記したことがあるが それも軽率な物言いだったように思われる。秀吉―半兵衛―官兵衛を観る限りは 巧く遣って居た 或いは巧く立ち回って居たのは どうやら軍師陣のように映るのだ。
戦国史に興味を抱き始めた頃 「豊臣秀吉」は寧ろ好きな大名だったが 半兵衛(と官兵衛)を追ううちに その像が徐々に別の輪郭為すのを感じて居る。

余談になるが 半兵衛唯一の側近として登場した「赤丸」という男の一粒種が 他家へ養子に出た末 「剣豪:伊藤一刀斎」へと長じた という大胆な設定には意表を衝かれた。「まさか!」と 早速NETに当たってみたが 彼の剣豪にそのような資料は見出せない。『木枯らし紋次郎』シリーズを著した筆者ならではの発想という処か。もしも実話だったのなら 養子斡旋元が半兵衛だっただけにとても興味深いのだが この話はそれきりで終わっている。単なる挿話として挟むには何やら手が込んでいるから 当初はもっと踏み込むつもりが端折られたのか それともこれを下敷きにまた別の物語が存在するのか――。

Theme : 歴史・時代小説  >> 本・雑誌

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竹中半兵衛
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